むかし語り

この匂いを知っている。

回覧板ってご存じでしょうか?

マンションで、町で、部落で、回ってきたことはないでしょうか。

ようするにね、グループ内の人にお知らせがあるとき、もしくは配布物があるとき、それをバインダーに挟んで順々に回していくんだ。渡されたら責任を持って次の人に渡すの。バトンだね。

で、これがもうめんどくさくて!

・・・っていうのは今回の主題じゃない。

先日ですな、仕事場で人がいなくて、私が隣りの家に持っていったんですよ。

そこのうちのおばあちゃんもお客様だから、結構気軽に持っていけたんですけど、家にチャイムがない。(これ、珍しいことじゃありませんよ)

「ごめんくださーい、回覧板でーす」と声をかけてカラカラドアを開けたとき、ふっと鼻に古い匂いがついたんです。

中は人気がなく、電気がついていない分昼間でも薄暗くて、天井近くにくすんだ神棚がある。

こういう家、うちの地方ではよくあります。むかしはさぞ、大きく栄えた家だったんだろうな。その骨組みを崩さずにいまの家を造ったんだな、みたいな匂い。

なんというんだろう。埃・・・とは違う。台所のお味噌の匂い?・・・とも違うなあ。柱に染みついた・・・ほら! もっと文学的に、ほら!!

と考え考え、途中でふっとひらめいた。

 

古い神の匂いがする

 

これだぁっ!!(なにが?)

いいなあ、遠野物語みたい。民俗学の香りみたい。うっとり。

この勢いで小説を一本書けないかな!と思ったまま放置してるので、悔しいから日記に書いてみた。

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そんなこともあるんです。

私が通っていた高校のある町で、四十年ほど前、珍事があったそうです。

とあるじいさんの葬式の最中、じいさんが甦った。

医者から確かに死亡したとの書類ももらったのに。

きていた坊さんは腰を抜かす、弔問に訪れていた客は逃げ散る、それはもう大騒ぎだったそうで。

それから一週間じいさんは生きたそうですが、もちろん普通に寝て起きて、という生き方じゃない。

七日間、ずっとうめくような声をたてていたとか。

そりゃあ回りのほうが生きた心地がしませんね。

しかもじいさん、生前は坊主で、死んだ後に奥さんが「まったく! 面倒な人ほど死ぬ時まで面倒なのよ!」と言っていて。

ああ、死に際は美しく、と思った今日この頃。

「殺すに殺せないですもんね」

と至極真面目に言ったら笑われてしまいました。

いやはやすごい話もあったもんだ。

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日本のむかし話だね

お客様の近所に、やけどに効く薬を作っているおうちがあるそうです。

普通の民家なんだけど。

言われなきゃ分からない普通の民家なんだけど、口コミなのか、有名らしい。

それが、一子相伝で、女性しか作れないらしい。

・・・・・・おいおいおいおいかっこいいなおい(笑)

やっぱりあれだよね、薬とか調合するさ、ほら、両手でごろごろ転がして擦るやつ! あれ使うのかな?! とか妄想たくましくしてほくそ笑んでいるんですが。

実物がとっても見てみたいです。買ってきてもらおうかしら。いつかのために。妄想のために。

ちなみに今はそこの家のおばあちゃんしか作れないそうです。若い息子さんもいるんだけど、内容のことは一切知らないそうです。ど、どんな秘法が?!(わあい)

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GHQ?

友人の勤め先にカモシカが出現したそうです。(だいぶ前の話ですが)

その日記を仕事場で見た私、さっそくお客さんにリサーチ。

 

「このへんでもカモシカって出ますよね?」(どんな場所に住んでいるかたやすく想像がつく質問である。)

 

そしたら、出るらしい。

ちなみに鹿も、出るらしい。

鹿はまあね、たまに聞く。玄関先に立っていて、目があってお互いぎょっとしたとかさ。

でもどっから来るんでしょうね、山をわたってくるのよ、は~、はるばる、私むかしO半島にいたんだけどね・・・とおばあちゃんかく語りき。

いまO半島は鹿が多すぎて、半分に減らそうとしているらしい。

むかしは進駐軍がきて、鹿をとっては棒に足からつるしてどこかに運んでいったのよ。そのころは鹿がほとんどいなくてね。

ははあ~~~~っていうか、進駐軍?

え? いつ頃の話ですか? と聞いたら、27年くらい前とのお返事。

その時代にまだ進駐軍っていたの?!

「ほへ~~~進駐軍! じー・・・GHQ?」←違います。進駐軍はGHQと違います。傘下?になるのか?

ほかにも、まだ捕鯨船がたくさんあった時代で、鯨がくるとサイレンが鳴って、子ども連れて解体作業を見に行ったとか。長刀みたいので腹を切ると臓腑がどーっと出てきたとか。(ぎょえー!)

気分がのってきてほかのお客様にも進駐軍についてきく。

「さすがにその頃には進駐軍はいなかったけどなあ」とか、「形を変えて今でもあるよ」とか、「私疎開してこっちにきて住み着いたから」とか。

疎開して住み着くってあったんだ・・・!

どちらからいらしたんですか?と聞いたら、東京の下町、神田のあたりみたい。

へー! じゃあにぎやかなところから来たんですね、こっちはさびしかったでしょうね、とか色々話すうち、むくむくとわきあがる好奇心。

「吉原は浅草ですよね?」

「伯爵とか子爵とかまだいましたか?」

だいぶ歴史を間違ってるよ自分! でも伯爵とか子爵はいたみたいだよ自分!!

戦後は苦労なさったでしょうね、ほら、うちらの税金で食べて楽してたから、という言葉に思わず、「なるほど!」と。

どうも私はゴールデンデイズ(高尾滋作)と比べていろいろ考えちゃうんですけど(もしくは北村薫さんね)、ああいう生活してる人が普通のサラリーマンになったらいろいろ大変だろうなあ。

「じゃあざまあみろと思う人も多かったでしょうね」

とあけすけに言ったら、世の中にはいろんな人がいるから、そういう考えの方もいたでしょうねえ、だそうだ。すいません、私真っ先に考えてそうです、そういうこと。

あー、いろいろ話きけて楽しかった! もっと色々聞きたいな。おばちゃんおじちゃんリサーチしたい。着ていたものとか、食べ物とか、味噌は作っていたのかとか、そういう生活に密着したことが知りたい。

取材ノートを作ろうかな、とちょっと思ったので、その前にカテゴリに「むかし語り」というのを増やしてみました。

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